『カールじいさんの空飛ぶ家』(カールじいさんのそらとぶいえ、原題:Up)は、2009年公開のアニメ映画。ピクサー初のディズニーデジタル3-D版も同時公開された。同時上映は短編アニメーション『晴れ ときどき くもり』(Partly Cloudy)。
第62回カンヌ国際映画祭のオープニング作品となった(アニメ映画としては初)。 第67回ゴールデングローブ賞アニメ映画賞・作曲賞受賞。また第82回アカデミー賞にて、アニメーション映画としては1991年の『美女と野獣』以来史上2度目となる、作品賞候補入りを果たした。
あらすじ[]
冒険に憧れる少年カールは1軒の空き家で同じく冒険好きな少女エリーと出会い、意気投合する。成人した二人はやがて結婚し、初めて出会った空き家を新居とした。二人の間に子供は授からなかったものの、”伝説の滝”パラダイス・フォールについて語り合い、いつかそこに行こうと約束する。夫婦の時間を楽しみ、長い間共に幸せに生きてきたが、やがてエリーは病に倒れ、先立ってしまう。
一人になったカールは、街の開発計画によって周囲に高層ビルが建設されていく中、妻との思い出が詰まった家を守るため、立ち退きの要求を頑固に拒み続けていた。ところがある日、立ち退きを迫る相手に誤って怪我をさせてしまい、立ち退かざるをえなくなってしまう。そして立ち退きの前夜、カールは妻の遺した冒険ブックを眺めながら決心し、10297個もの風船を結びつけた家ごとパラダイスフォールに向けて旅に出る。
キャッチコピー[]
全て日本版
- 愛する妻が死にました― だから私は旅に出ます。(チラシ・TVスポット)
- いくつになっても、旅に出る理由がある。(予告編・前売チケット)
- じいさんだって、飛べるんです。 (特報・パネル)
- 人生、このままじゃ、終われない。 (新聞広告)
- 人生って、最高の冒険だ。(DVD・ブルーレイ・microSD)
- 僕のともだち、78歳。(DVD・ブルーレイ・microSD)
登場人物[]
- カール・フレドリクセン
- 主人公。無口で頑固な78歳の老人。冒険好きだった少年時代に同じ冒険好きの少女エリーと出会い、結ばれる。初めて出会った家を新居にして幸せに暮らしていたが、エリーが病で没し一人になると、思い出の詰まった家に固執するあまり頑固な性格になる。立ち退き勧告で家を奪われそうになったとき、エリーとの約束を果たすため、風船をつけた家と共に旅に出る。
- エリー
- カールの妻。少女時代にカールと出会い、自身が作った「冒険クラブ」に誘う。結婚して幸せに暮らしていたが病に倒れ、死の直前に「わたしの冒険ブック」をカールに託す。
- ラッセル
- 好奇心旺盛なボーイスカウトの少年。8歳。「老人の手伝いをする」という任務を遂行するため、何かできないことはないかとカールにつきまとっていた。カールの旅立ちの際に家に紛れ込み、旅に同行することになる。
- ダグ
- 犬語翻訳機をつけた犬。マンツの犬軍団の一匹で、命じられた任務を遂行しようとしていたが他の犬達からは落ちこぼれ扱いされており、常に一匹で行動している。カール達と行動を共にするうちにカールを主人として慕うようになる。大勢いる犬の中で彼だけがデフォルメされて描かれている。
- ケヴィン
- マンツが生涯を賭けて捜し求めている伝説の怪鳥。体長12フィート(3m65cm)で、カラフルな羽毛をもつ。ラッセルと出会い、なつくようになる。彼が名付け親だが実は雌で、巣には子供もいる。チョコレートが好物。しかもラッセルを放り投げて遊ぶほど首と脚が強靭で、カールとラッセルを乗せて走れる。
- アルファ
- マンツの犬軍団のリーダー。命じられた任務を忠実に遂行する。彼の犬語翻訳機は故障しており、声が高くなってしまっている。ベータやガンマなどの配下の犬も犬語翻訳機をつけている。
- チャールズ・F・マンツ
- 30年代に活躍した冒険家で子供時代のカールやエリーが憧れた存在。94歳。「パラダイスの滝の怪物」とされる怪鳥の骨を持って帰ってきたが偽物と断定され冒険家協会の協会員の資格を剥奪される。名誉を傷つけられ、「怪物を生け捕りにする」と宣言し南米へ旅立ってから行方不明とされていたがカールと旅の途中で対面する。洞窟に飛行船を置きアジトとし、犬軍団を従えて怪鳥を探し続けている。
声の出演[]
役名 | 原語版声優 | 日本語吹き替え |
---|---|---|
カール・フレドリクセン | エドワード・アズナー | 飯塚昭三 |
チャールズ・マンツ | クリストファー・プラマー | 大木民夫 |
ラッセル | ジョーダン・ナガイ | 立川大樹 |
エリー(子供時代) | エリザベス・ドクター | 松元環季 |
カール(子供時代) | ジェレミー・レアリー | 吉永拓斗 |
ダグ | ボブ・ピーターソン | 松本保典 |
ケビン | ピート・ドクター | 原語版流用 |
アルファ | ボブ・ピーターソン | 大塚芳忠 |
トム | ジョン・ラッツェンバーガー | 楠見尚己 |
ベータ | デルロイ・リンドー | 檀臣幸 |
ガンマ | ジェローム・ランフト | 高木渉 |
スティーブ | ダニー・マン | 小形満 |
アナウンサー | デヴィット・ケイ | 垂木勉 |
イディス巡査 | ミッキー・マッゴーワン | 梅田貴公美 |
看護士ジョージ | ドナルド・フュリラブ | 多田野曜平 |
看護士AJ | ジェス・ハーネル | 朝倉栄介 |
オメガ | ジュシュ・クーリー | 三宅健太 |
ストラウチ | ピート・ドクター | 滝知史 |
主な受賞[]
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(2009年):作品賞、アニメ映画賞
- 第67回ゴールデングローブ賞:アニメ映画賞、作曲賞
- 第37回アニー賞(2009年):長編アニメーション賞、監督賞
- PGA賞:アニメ映画賞(2010年)
- 第82回アカデミー賞:作曲賞、長編アニメ映画賞
備考[]
- カールの家が旅立つ際、『トイ・ストーリー』に出てきたピザプラネットのデリバリートラックが通常より角ばったデザインで登場する。
- 本作品の犬が会話する装置の元ネタはタカラトミーの玩具バウリンガルである。
- カールの家の前には「SUSHI PRONTO」というお店がある。
- カールが出廷した法廷の部屋番号がA113。A113はピクサー長編作品などに出てくる数字。
- カールが南米行きの航空チケットを購入した受付にあるパンフレットに、ピクサーの短編『ニック・ナック』に登場する水着の女性がいる。
- カールが町を旅立つ際、窓の外を通る子供部屋に、次回作『トイ・ストーリー3』の「ロッツォ・ハグベア」がカメオ出演している。
- 浅草キッドの水道橋博士が自身の番組『浅草映画研究会』にて、本作のストーリー等がレイ・ハリーハウゼンの『SF巨大生物の島』と酷似していると指摘した(しかし「盗作ではなくオマージュである」とのこと)。
「モンスターズ・インク」で、マイクとセリアがデートをする寿司レストランと「メーターの東京レース」でメーターがドリフトに失敗し誤進入した寿司レストランの店名は、「ハリーハウゼン」となっている。ピクサーのスタッフのお気に入りなのだ。 - 「パラダイスの滝」のシーンはギアナ高地に実在する滝(エンジェル・フォール)を取材したもの[1]だが、1925年の無声映画「ロスト・ワールド」へのオマージュが込められている。
- 前作の「ウォーリー」から、台詞のないシーンであえて表現することにピクサーはこだわっている。無声映画に映画の原点を見ていることが判る。
- カール・フレドリクセンは、名優スペンサー・トレイシーの晩年の容姿をモチーフにしている。
- 日本版予告編・TVスポットのナレーションは渡辺いっけいが担当した。また、ピクサーの前作『ウォーリー』、次回作の『トイ・ストーリー3』の予告編ナレーションも担当している。
- ピクサー初の3D映画長編作品。同時上映の「晴れ時々曇り」も3D化された。また、オープニング及びエンディングのピクサーのロゴも3D上映では3D用のアングルで上映された。
脚注[]
- ↑ DVDのボーナスコンテンツより
関連項目[]
- 24時間テレビ 「愛は地球を救う」 - 同作品をイメージしたTシャツが制作されている。
- 野村克也
- 鈴木嘉和
- 自見庄三郎
外部リンク[]
- (日本語)
- (英語)
- Disney Digital 3-D
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